翻訳の自動化、機械翻訳、そしてAIを活用したローカライゼーションというコンセプトや技術はここ数年、ずっと話題になっています。機械翻訳されたコンテンツのニーズは高まっており、技術の進歩もそれに追いついてきているようです。
しかし、翻訳技術が発達する一方で疑問も生まれてきます。選んだ機械翻訳エンジンはどの程度信頼できるものなのだろうか?翻訳結果の品質や、ポストエディットがどの程度必要になるかはどうやって確認するのだろうか?
機械翻訳の品質を評価する必要性
機械翻訳を使用する場合、考えるべき要素がいくつもあります。例えば、どんな文書が機械翻訳に適しているか、出力された翻訳結果をどの程度あてにするのか、対象プロジェクトや対象文書に機械翻訳を適用した場合、どの程度の品質を期待するのか、などです。
そしてもちろん、言語ペア、翻訳したい文書の種類、そして対象となる業界まで考慮して、そのプロジェクトにぴったりと合う機械翻訳エンジンを選択しなければなりません。考慮すべき要素も多く、利用できる技術も多岐にわたる中で、それぞれのニーズに最も合致するものを探すために、希望する機械翻訳エンジンを評価する必要があります。
機械翻訳の評価方法
機械翻訳エンジンの評価には2つのアプローチがあります。
翻訳の目的は、人間が読んで理解できるターゲット言語の言葉に置き換えることですので、機械翻訳の出力結果を人間が評価することが、当然として1つのアプローチになります。
しかし、人間による評価には、特有の難しさ(評価者ごとに付けるスコアが異なったり、評価者が同じであっても回数を重ねるごとにスコアが異なったりする場合)があり、またそのような評価にはもちろん時間もかかるので、必ずしもベストな方法とは言えません。この場合、何かしらのシステムやソフトウェアによる自動評価が解決策となります。
memoQのMT評価ソリューション:AIQE
memoQには様々な機械翻訳エンジンを統合できるため、当社ではユーザーの皆様がそれらのポテンシャルをフルに活用できるようにしたいと考えています。この実現のために、memoQ 10.1にAIQE(人工知能ベースの品質評価)を導入し、2つ機能を実装しました。それがTAUSとModelFrontです。AIQEは、翻訳会社や企業が、機械翻訳の信頼性が低い場合にそれに伴うリスクを効果的に軽減し、新たに自動化の機会が生まれて機械翻訳を使う際にはその効率を向上させることができるように導入されました。
今年初めに最初のバージョンがリリースされて以降、memoQ 10.4では、機械翻訳エンジンの評価がよりしやすくなり、出力された翻訳結果の品質をさらに詳しく予測できるような新機能が追加されています。
これにより、それぞれのニーズに合った機械翻訳技術を適切に選ぶことができ、機械翻訳結果のポストエディットにどれくらいの時間や労力が必要になるのかを予測しやすくなります。また、制作期間を短縮したり、翻訳の品質を向上させたり、ポストエディットにかかるコストや時間を節約したりすることもできます。
AIQEの新機能
memoQ 10.4が登場し、それとともに機械翻訳を活用する際のワークフローの最適化とプロセスの自動化を加速する機能も追加されました。
AIQEが前翻訳でMTエンジンを自動選択
これまで文書を前翻訳する際には、翻訳メモリ、ライブ文書より一致した翻訳が、さらには選択した機械翻訳エンジンの翻訳が流し込まれていました。
しかし、文書、プロジェクト、クライアントに合ったMTエンジンはどのように選べばいいのでしょうか?これからはAIQEが前翻訳の段階で臨機応変に様々なエンジンから最適な翻訳を選択してくれます。複数のエンジンを指定して前翻訳を実行し、セグメントごとに最適な翻訳をAIQEに選んでもらうことができるのです。
MT & AIQEで前翻訳の自動確定を実行
これはAIQEで最も重要な機能の1つです。自動確定機能により、memoQで機械翻訳を使用する際に、翻訳のワークフローを簡素化および自動化でき、不必要な手順をスキップできるようになります。AIQEの品質特性は翻訳メモリのマッチ率と似ており、翻訳メモリを使用した翻訳と同じような処理を行うことができます。
前翻訳の自動確定機能にAIQEを組み込むことで、品質が保証されたMT & TM翻訳による完全に自動化された翻訳が可能になります。
.XLIFFと翻訳グリッドにAIQEを「マッチ率」のようにして表示&記録
これまでmemoQでAIQEを利用する場合、機械翻訳のマッチ率は翻訳結果にのみ表示されていました。
memoQ 10.4ではAIQEが改善され、マッチ率が翻訳グリッド自体にも表示されるようになりました。AIQEが判定した翻訳精度がマッチ率に反映され、カッコの中に表示されるため、機械翻訳エンジンからの訳文であることがわかります。
そのマッチ率は、プロジェクトに関連づけられている.XLIFFファイルにも表示されます。これにより、その訳文がどのMTエンジンから出力されているかを確認できるだけでなく、対象文書ではどのエンジンのパフォーマンスが高かったのかを確認することもできます。これは機械翻訳エンジンを評価するのに特に役立つ機能です。
機械翻訳の評価:まとめ
機械翻訳を利用する場合、機械翻訳エンジンをプロジェクトや文書に適用する前に査定して評価することが極めて重要です。このステップを経ることで、出力される翻訳がどのような品質になるか(詳しければ詳しいほど良い)を事前に知ることができます。これにより、ソースを適切に割り当てることができ、プロジェクトの納品までにかかる時間も正確に予測できるようになります。
memoQ 10.4に導入されたAIQEの新機能により、評価プロセスはこれまで以上に簡単になりました。memoQ 10.4をダウンロードして、機械翻訳を使ったワークフローをAIQEで自動化、強化しましょう!
Zsófia Lelner
Linguist turned content marketer, telling the story of memoQ.