「アクセシビリティ」と聞いて思い浮かべる技術は、ADHDの人たち向けに設計されたWebサイトや音声アシスト技術のほかにもいろいろあります。この数十年で世界は大きく変化しました。その結果、世界はより包括的になり、障害やメンタルヘルスの問題を抱える人を含むあらゆる人が日常生活を一層スムーズに送れるようになりつつあります。
翻訳業界も例外ではなく、翻訳管理システムやCATツールの導入により、世界中で翻訳の仕事に就く人が増え、翻訳作業がより円滑に進むようになっています。このような状況においてmemoQは、視覚障害者がmemoQの製品や文書にアクセスできるように新たな角度から取り組んでおり、視覚に障害がある人もない人と同じようにシームレスにmemoQを使用することができるようになりました。
ソフトウェア開発におけるアクセシビリティとは何か?
デジタルアクセシビリティとは、デジタル製品またはサービスが、何らかの障害をもつ人々も含め誰もが使用できるように設計されている状態を言います。ここでの「障害」には、視覚、聴覚、運動など恒久的な障害だけでなく、腕の骨折など一時的な障害も含まれます。
アクセシブルなデジタル製品(またはWebサイト)とは、「誰でも簡単に消費・操作できるものであり、(何らかの理由で)意図したとおりに使えないデジタル製品はアクセシブルでないとみなされる」とInviggoは、指摘しています。
障害のある人は、アクセシブルでない技術のために、職場や人生全般において障害のない人に比べて機会に恵まれてきませんでした。しかし、デジタルアクセシビリティによりそのような障壁はなくなり、障害のある人もない人と同じサービスにアクセスできるようになります。
アクセシビリティが重要である理由
翻訳業界では、翻訳管理システムやCATツールがますます広く利用されつつあり、リンギストは大学の翻訳の授業でこれらのシステムについても学びます。同様に、多くの翻訳会社やクライアントは、自社が使用している翻訳管理システムで仕事を割り当てたりプロジェクトを監視したりしており、翻訳者にも自社が選んだ翻訳ソフトウェアの使用を求めています。したがって、視覚障害のある翻訳者もない翻訳者と同じ機会を得て、アクセスできない翻訳ツールのために仕事をもらえないという事態にならないように、こうしたシステムをアクセシブルにすることが不可欠なのです。
以下では、視覚に障害のある人にも円滑かつシームレスなユーザーエクスペリエンスを体験していただくため、memoQの製品とドキュメンテーションに加えた変更をご紹介します。
memoQで変更したこと
アクセシビリティに対する私たちの取り組みは2段階で行われました。視覚に障害のある人が外部の助けを借りずに使えるように、Webベースのツールを画面読み上げソフトウェア(JAWSなど)で使用できるようにしたいと考えました。これには、ドキュメンテーションにおいて代替テキストを追加したり構造を変更したりすることで、あらゆる情報をmemoQのウェブサイト上で見つけられるようになり、結果として作業者がmemoQの全機能を使用できるようになることが必要でした。
よりアクセシブルな製品を目指して
私たちが行った最も重要な変更は、memoQ 10.1のアクセシビリティモードでした。これは、memoQ WebTransをさまざまな画面読み上げソフトウェアと統合できるようにしたものです。テストした主なツールはJAWSでしたが、NVDAやWindows Narrator、MacOSのVoiceOverなど他のソフトウェアも使用できます。アクセシビリティモードは現在、Web版memoQでのみ使用でき、デスクトップ版では使用できないことにご注意ください。
アクセシビリティモードボタンをオンにすると、テキストフィールドがコンテンツの入った翻訳グリッドセルに重なるので、JAWSなどの画面読み上げソフトウェアを使用しながらセグメントの読み取りや編集ができます。インラインタグと書式タグは、これらのテキストフィールドに生のテキストとして表示されます。そのため、画面読み上げソフトウェアがこれらのタグを読み上げ、ユーザーはタグをテキストから分離できます。
ドキュメンテーションへの変更
WebTransをアクセシブルにしたほか、ドキュメンテーションとヘルプセンターのページにもいくつかの変更を加えました。
ドキュメンテーション内のすべての画像は代替テキストになっているため、画面読み上げソフトウェアはドキュメンメンテーション内のスクリーンショットを言葉で説明することもできます。
また、ドキュメンテーションとヘルプセンターのページは、通常のリンクを可能な限りわかりやすく多くの情報を言葉で説明しているものに置き換えることで、よりユーザーフレンドリーになりました。
この変更がmemoQユーザーにもたらしたこと
以下は、ユーザーへのインタビューでわかったことです。以前は視覚障害者はmemoQ(および一般的なCATツール)を使用できず、画面読み上げソフトウェアがツール内をナビゲートしたり、翻訳グリッド上のソーステキストやターゲットテキストを読み上げることもありませんでした。視覚障害者はmemoQを使い始めるとき他人に頼らなければなりませんでした。しかし、今回加えたさまざまな変更のおかげで、視覚障害者も、自分が選んだ画面読み取りソフトウェアの助けを借りて、自分でmemoQを自由にナビゲートして使用できるようになりました。
アクセシビリティに関する今後の計画
紹介した変更は間違いなく、memoQをすべての翻訳者にとって100%アクセシブルでユーザーフレンドリーなツールにするための最初のステップにすぎません。これまでは、視覚障害者のみに焦点を当ててきましたが、今後は、memoQを他の障害のあるユーザー向けにさらにインクルーシブにすることも計画しています。
やるべきことはまだまだたくさんあるので、ウェブサイトや製品をさらに改善するため、ユーザーへのインタビューや調査を実施しています。今後のmemoQリリースでは、アクセシビリティ関連機能をさらに改善する予定です。
Zsófia Lelner
Linguist turned content marketer, telling the story of memoQ.